管楽器演奏で最も難しいことを突き詰めると、「四角い音」だと思います。
楽譜の記号には、スタッカート、アクセント、テヌートといろいろありますが、普通に「四角い音」で吹けという楽譜の指示はありません(テヌートが近いかもしれませんが。)。
音の出だしから音の切りまで、全くの「四角い音」を出すのは、最も簡単そうに思えますが、これが最も難しい。人間というアナログが吹奏する訳ですから、電子楽器のような完璧な「四角い音」を出すのは究極的な意味において不可能です。
ただ、「四角い音」を意識してトレーニングをするという姿勢は大事だと思います。
この「四角い音」が出ないと他の奏法の効果の意味がなくなるというぐらい大事なポイントです。この「四角い音」を意識しないまま、いきなりビブラートやら、ベンドやら、サブトーンやら、スラップタンギングやら、、、、、効果半減どころか効果無し。キツい言葉で言うなら、音楽でなく雑音になってしまいます。
実は僕は自分自身、四角い音が出せているという自覚がありません。目指しているのですが、録音を聞いてみると全く「四角い音」をしていない。完璧な「四角い音」(※)を出せる人はプロの中でも稀有なのではないでしょうか。
※まず、吹奏楽器で完璧な「四角い音」は不可能だということを認識することが重要だと考えます。
「四角い音」とは?
くどくどと重要性を述べましたが、図解してみると分りやすいかと思います。

まず、音の始まりの状態をチェックします。
・音の立ち上がりの音程はぶれていないか?
・音の立ち上がりの音圧は一定しているか?
・音の立ち上がりの音量が極端に大きく又は小さくなっていないか?
次に音を出しているときに、音量、音程、音色が一定しているかをチェックします。
これはみんな意識していると思いますので、割愛します。
最後に音の終わりの状態を音の始まりと同様にチェックします。
これができると、(ほぼ)四角い音の完成!
なんだ簡単じゃないか!というのは早計。
完璧にできるという自信がある人には、僕から百万円プレゼントします。
というかそもそも不可能ですから。
では方法はないかというと、不可能を可能に近づけることはできると思います。
この方法を以下解説します。
四角い音を出すための4つのステップ
先ほどのイメージ図を少し展開してみると分りやすいかと思います。

ステップ1 息の圧力開始
まず、音の立ち上がりの前の重要なフェイズです。
舌をリードに付けたまま、息の圧力をリードの尖端までかけておきます。
この準備フェイズのないまま、ステップ1、ステップ2を同時にやろうとするので、音が潰れるのです。
ステップ2 舌をリードから離す
既に息の圧力がかかった状態ですので、舌をリードから離すと自然に音が出るはずです。
何も意識しないと、音がドバーっ!と出すぎたり、圧力からの開放に負けてしまいアンブッシュシュア(口の形)が崩れたりという最大の難関です。
この間から次のステップ3までの間は真っ直ぐに息を入れて音程、音量が一定になっているかをチェックします。
ステップ3 舌をリードに付ける
音の最後は、舌をリードにつけてリードが共鳴しないように音を終了させます。
注意すべきは、息の圧力の終了と同時に音を終了させないようにすることです。まず、舌をリードに付けて、リードの振動を止めてから、息の圧力を止めることがポイントです。
ステップ4 息の圧力終了
最後に、ステップ3で舌をリードに付けて音を終了させた後に、息の圧力を止めてリラックス。
以上のステップがリード楽器における音出しの基本です。
よく見られるのは、ステップ1及び2を同時に、ステップ3及び4を同時に、つまり、息の出だしとタンギングが同時になってしまう決定的な間違いです。
プロは、無意識にこのステップ1~4までを、どんな短いフレーズのときでも繰り返しています。まずは、くだらないと思わずに「意識する」ことから始めると良いと思います。
日本語では、一般的にタンギングを「舌付き」という表現をすることが多いようですが、「舌離し」と「舌付き」をセットでタンギングと言ったほうが正確だと思います。
ちなみに、四角い音を究極に短くした音がスタッカートです。
カテゴリー:practice
コメントを残す